パンケーキを乗せて猛ダッシュ。イギリスのちょっと変わった伝統行事とは。

クリスマスや年末年始の記憶が少し遠のいた早春の頃、イギリスにはパンケーキ・デイがやってくる。これは日本によくある月日の数字の語呂合わせで決められた「〜の日」とは違い、れっきとしたイギリスの国教であるキリスト教の行事のひとつだ。

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スーパーの店頭で無料配布のレシピカードも今月はパンケーキが。

イエス・キリストが十字架にかけられ、その後復活するイースター前日までの40日間(日曜日は含まない)はレントと呼ばれ、その時期はキリストの苦しみに寄り添うための断食期間となっている。 

レントに入る前日はシュローブ・チューズデイと言い、この日はそれまでの罪を悔い改め、断食前にキッチンにある卵や牛乳、バター、砂糖などを使い切るためにパンケーキを焼く。食を断つ日々に備えて滋養をつけるためという説もあるそう。だからシュローブ・チューズデイは別名パンケーキ・ディとされている。

イースターは固定の日付ではなく毎年変わり、「春分の日の後、最初の満月直後の日曜日」とされている。なのでパンケーキ・デイも年によって違い、今年は2月17日だった。イースターは4月5日となっている。

映画『ハリー・ポッター』シリーズのロケ地として知られるレドンホール・マーケットのパンケーキレースは、参加者が山高帽をかぶって走ることで有名。毎年多くの人が見学に訪れる。

この日に各地で行われる、パンケーキを乗せたフライパンを持って走るパンケーキ・レースもお楽しみのひとつ。これは1445年にイングランド南東部のオルリーという村で、シュローブ・チューズデイの礼拝に遅れそうなひとりの女性が慌ててエプロン姿のままフライパン片手に教会まで走ったことに由来していると言われている。

パンケーキ・デイが近づくにつれ、スーパーにはパンケーキミックスなどの家庭で楽しむための食材が目につくように並べられる。

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パンケーキミックスと共にメイプルシロップやジャムを並べた、スーパーのパンケーキ・デイのための棚。どちらのお店にもレモン汁があるのがイギリスらしい。

最近はロンドンでも、日本でおなじみのふかふかのパンケーキや、フルーツやクリーム、チョコレートやキャラメルのソースなどをトッピングしたものが楽しめる。本来のイギリス流パンケーキはクレープより気持ち厚めなくらいの薄さで、フライパンに大きく広げて焼く。砂糖をまぶしてレモンを絞っただけのシンプルなものが定番だ。息子が小学生の頃はパンケーキ・デイにはこれをくるくると葉巻状に丸めたものをおやつとして持たせていた。

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我が家のパンケーキ。

現在はレントの期間に断食をする敬虔な信者よりも、私を含めてこの日にパンケーキだけを楽しみ、その後は知らん顔の自分に都合の良い解釈の人が圧倒的多数と思う。けれどもまだまだ寒くお天気も優れない日が続くイギリスで、信心深くない者たちの心もぱっと明るくしてくれる、ありがたい行事であることは間違いない。

在英ライター。得意ジャンルはアート、デザイン、ファッションなどカルチャー・ライフスタイル全般。近年はサステナビリティ、エコロジー、インクルージョンにも興味あり。好きなものはコットンポプリン、ギャバジン、ウールメルトン、手仕事、音楽、美術館と博物館、紙の読みもの。

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