食と雑貨で魅力を堪能! ブダペストとプラハで過ごす、東欧のクリスマス。
Travel 2025.12.20
一年の中で街がひときわ美しく彩られ、多幸感に包まれるフェスティブシーズン。中世ヨーロッパや帝国時代の雰囲気が色濃く残る旅先として近年人気を誇るハンガリーとチェコにおいても、随所がきらびやかな装飾をまとい、祝福のムードを漂わせる。壮麗な歴史的建造物が立ち並ぶ傍らで、中東欧ならではのオリエンタルな民族文化も感じられる、ふたつの都市の特別なホリデーの様子をお届け。
ブダペストの祝祭を彩る、手仕事の美意識やローカルな味覚。

美しい河岸に沿って絢爛な建物が点在し、古くから"ドナウの真珠"と称えられてきたブダペスト。キリスト教文化の影響下にありながら、建国や独立など国家と民族の歴史に根ざした祝日を多く残す。

そのためかクリスマスも、西欧諸国でメジャーな"サンタクロースが贈り物を持ってくる"といった認識とは異なる習慣を持つというから興味深い。ハンガリーやチェコなどの東欧諸国では、サンタではなく"幼いキリスト"が子どもたちにプレゼントをくれるのだとか。サンタクロースは、12月6日の聖ニコラウスの日にチョコレートなどの小さなギフトを運ぶとされているそうだから、より本来の"聖誕祭"の意味に近しい文化が生きているといえるのかも。

ブダペストのクリスマスマーケットは特にその美しさで知られ、近年ではヨーロッパ全体でも高い評価を得ているそう。初代国王を祀る由緒正しい聖イシュトヴァーン大聖堂前の広場は、イルミネーションが輝く景観と治安のよさからくるクリーンな印象、ライトアップされた大聖堂の荘厳さがあいまって、心躍るムードを盛り上げる。時間帯によっては、歴史ある建造物をキャンバスにしたプロジェクションマッピングのショーも。

道ゆく人たちの目を楽しませるのは、贈り物や飾りつけにぴったりなオーナメントやお土産品のワゴン。ちなみに、ブダペストの2大マーケットのひとつとして大聖堂前広場と双璧をなすヴルシュマルティ広場の店舗には、職人やクラフト作家による民芸品、伝統工芸品を中心に扱うことが奨励されているというから、天然素材を使用した手づくりの品を求める人はぜひこちらにも足を運んで。

ハンガリーでは高頻度でローカルフードに用いられる名産品の代表格として、フォアグラとパプリカが挙げられる。そんなパプリカを乾燥させて柑橘類のドライフルーツやシナモンスティックと組み合わせたガーランドは、この国ならではのクリスマス飾りといえそう。シナモンやパインツリー、ローズマリーなどのエッセンシャルオイルがともに販売されており、これを装飾に垂らして"香るインテリア"に。オレンジやシナモン、クローブなどを温めてつくるグリューワインを思わせる、フェスティブ感あふれる至福の芳香があたりに漂う。
実はクリスマスの飾りつけを食品でおこなう文化はハンガリーに広く浸透しているようで、サロンツコルと呼ばれる小さなキャンディがその好例。光沢感のある美しい包装紙の中には、ゼリーやマジパン、クリームなどをチョコレートでコーティングしたお菓子が。この包みをツリーに飾りつけ、ホリデーシーズンのあいだのデコレーションとするのだという。キロ単位で買っていく人も多いらしく、スーパーマーケットなどにも売られているので、この時季にハンガリーを訪れれば目にすることになりそう。

ほかにマーケットで欠かせないのは、ローカルで人気の屋台フード。揚げてつくるピザに似たラーンゴシュは、サワークリームやチーズをのせた定番品から肉と野菜を盛りに盛ったボリュームたっぷりのものまでが揃い、その背徳感たっぷりの見た目に惹かれて多くの人が行列をなす。ラードやバターをふんだんに使ったポテトのスコーン、ポガーチャも、イベントの際など何かにつけて登場する国民食なのだとか。スイーツをお求めなら、煙突のようにクルクルと縦長く巻かれたチムニーケーキを。中の空洞部分にアイスクリームやチョコレートをトッピングしたものは写真映えバッチリで、通りを歩いていると目に留まること間違いなし。
https://adventbazilika.hu/

賑々しい広場で五感を満たしたら、ぜひ聖イシュトヴァーン大聖堂の中にも足を運んで。ここはブダペストで最も大きなカトリック教会で、いまなお地元の人々のミサなどの場所として心の拠り所となりながら、それ以外の時間帯に観光客の訪問を受け入れている。初代国王のイシュトヴァーンを祀っており、内部の美しい彫刻や絵画はハンガリー人の職人によるものだ。

多種多様な大理石や金細工がふんだんに施された内装はハンガリー帝国の栄華を偲ばせ、この国の人の祖国にかける想いを肌で感じることができる。約6,400本ものさまざまな長さのパイプが組み合わさった見事なパイプオルガンは、鳥にしか聞こえない音域を奏でることもできるほどの逸品。高頻度でオルガンコンサートも開催されているそうだから、訪問時にはぜひチェックしたい。

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高揚感が人々の絆を育む、プラハの心温もる賑わい。

お次は、中世から続く美しい街並みを残すプラハへ。ここでも街の至るところにある広場という広場に、かわいらしいクリスマスマーケットのワゴンが軒を連ねる。チェコでもクリスマスのプレゼントを運ぶのは、幼きキリスト。"彼の生誕こそがギフトである"という信仰を物語っているかのようだ。
子どものためのイベント、という認識も強いそうで、キッズを家の外に連れ出しているあいだに残りの大人が大急ぎで室内のデコレーションを済ませ、サプライズを演出することもあるのだそう。またチェコでは特に、キリストが誕生する場面をジオラマで再現した"ベツレヘムの飾り"が重視されており、木彫りやガラス細工、紙製のものなど、さまざまな形でお目にかかれる。

プラハで最も大きく有名な旧市街広場のクリスマスマーケットの中央にも、大きな木彫りのジオラマが鎮座。そのほか、約25メートル前後もの高さを誇る巨大なクリスマスツリーがアイコニックな存在として知られ、イベントが催されるステージやフォトスポットとともに街の活気を象徴している。

プラハのマーケットは比較的エンタメ色が強いようで、巨大なポークのグリルや金物細工などのライブ販売をおこなっているブースも。どの店ももれなくお客で賑わっており、欧米からの観光客も含め、人々のクリスマスにかける熱量の大きさをうかがわせる。

マジパンやチョコレートをはじめ、クリスマスらしい華やかな見た目のお菓子も見逃せない。チェコではクリスマスケーキの代わりにクッキーを食べる文化があるというのも特徴的だ。アドベントの期間から、時には何十にものぼる豊富な種類のクッキーを大量に焼いておき、大きな缶や箱に入れたものをクリスマスイブの夜から少しずつ食べるのだとか。ペルニークと呼ばれるジンジャーブレッドクッキーはその代表格。現地のカフェやベーカリーでもお目にかかれる。

昼間の色鮮やかな活気ある雰囲気はもちろんのこと、日が落ちてきた薄暮に輝くクリスマスツリーの美しさには目を見張るものがある。心にほっと明かりが灯るような思いを噛み締められるのは、この時季にプラハを訪れた人の特権といえるだろう。
https://trhypraha.cz/

ちなみに街で最も賑わう旧市街市場のすぐ脇には、チェコで著名なミシュランのスターシェフであるラデク・カシュパーレクが、新たなチャレンジとして2023年に共同設立したばかりのレストランが。その名も「420」は、吹き抜けの圧倒的な開放感でゲストを迎える、建築好きにも美食愛好家にも見落とせない場所。
15世紀のロマネスク様式で建てられた建造物のかつての中庭部分に、モダンな天井と鳥が飛び交うアーティスティックなライトを配し、建物の持つクラシカルな趣と現代的なインテリアを見事に調和させている。大勢の人で賑わう観光地からほんの数歩足を踏み入れたところでこれほどまでに洗練された世界観を完成させているさまは、一見の価値ありだ。

メニューは伝統的なチェコ料理に独自のアレンジを加えたもの。魚のセビーチェにフルーツを合わせて酸味の重なりに奥行きを感じさせるサラダのほか、仔牛のシュニッツェルからブラックカラントのベリーソースを合わせた鹿肉のラグーにガチョウの内臓といったジビエまで、瀟洒なツイストが効いたラインナップが揃う。またゴシック様式の構造が残る地下室では、店内で焼きあげたペストリーや自家製のソーセージ、レストランのオリジナルグッズを販売するスペースも。日本には持ち帰りができないけれど、滞在時に味わえそうなら、ぜひテイクアウトにもトライすべきかも。

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行き帰りは、旅気分をとことん盛り上げるトルコ経由で

今回の旅は日本からターキッシュ エアラインズのフライトでハンガリー入り。旅程の最後はプラハを出て、イスタンブール経由で羽田空港へ帰国するという旅程をセレクトした。世界で最も多くの発着都市を有するエアラインだから、東欧のような知る人ぞ知るデスティネーションにもアクセスしやすく、無駄のないスケジュールを組めるのがうれしい。

世界三大料理を擁する"美食大国"らしく、機上の食の充実度でも知られており、あらゆる区間で機内食がサーブされるとか。特にイスタンブール発の便ではトルコ料理をセレクトできることが多いので、パイ生地を使ったボレキやラザニアに似たスボレイ、ケバブなど、異国情緒に満ちた味わいで旅の余韻を楽しく彩ってみて。
photography & editing: Misaki Yamashita cooperation: Turkish Airlines




