【パリのインテリア】パリジェンヌ流、本の収納方法とは?
Interiors 2025.07.09
自分の感性をもとに、知恵と工夫を凝らして日常を楽しく過ごす、フランス流の暮らしの美学「アールドゥヴィーヴル」(Art de Vivre)は、パリジェンヌの住まいのあちこちに息づいている。書棚のように実用的なものを収納する家具は、オブジェを一緒に飾ったり、DIYで好みの形状にアレンジするなど、自分らしい工夫を施すことがポイントに。人に見せることはもちろん、自身の心を潤すような飾り方を意識しよう。
好きなものを飾って、本棚を小さなミュージアムに。
エミリー・マラン(「Studio Marant」創立者、アートキュレーター)
エミリにとって、アートは五感を刺激するもの。眺めているだけでパワーを得られるから、暮らしに欠かせない。photography: Ayumi Shino
職業柄、公私ともにアートに囲まれた生活を送るエミリだが、自宅の書棚は実に自然体。たくさんの本と一緒に小さなオブジェで飾るが、考え過ぎずに直観のまま、好きな場所に置くようにしている。ジョン・ジョルノのワードオブジェや草間彌生のミニチュア作品から始まり、ディプティックのキャンドル、さらにパッケージ違いの避妊具を額装したものまで、彼女の手にかかれば何だってアートに! 気負いなく、自由な感覚でインテリアを楽しむのがエミリ流のスタイルだ。
本の背丈と同じか、超えないミニサイズものに限定してランダムに並べる。草間彌生のミニオブジェは、直島を旅した時のお土産として持ち帰ったもの。
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路上に落ちていた棚を、リメイクして命を吹き込む。
ヴィクトワール・ムヌール(フォトグラファー)
「作られた時に新しかったものも、いつしかアンティークと呼ばれるようになる」と、時を経て変化することにヴィクトワールは美を見出す。photography: Shiro Muramatsu
街や人の様子を切り取って写真に収めるのが、フォトグラファーであるヴィクトワールの日課だ。散歩中に道端で見つけたというリビングの棚は、1950年代に流行した"パリジェンヌの棚"と呼ばれるもの。早朝のパリを歩くと、素敵なものが路上にたくさん落ちているのだという。見捨てられた家具を拾っては、ペンキを塗り替えたり、取っ手を付けるなど手を加えて、新たな命を吹き込む。そうして再生した本棚は、いまでは彼女の宝物だ。本だけでなく、蚤の市で購入した愛らしいオブジェやドライフラワーなどを飾るのもいかにもパリジェンヌらしい。
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色を塗り変えて壁紙を貼る! 自由な発想で自分らしく。
ティフェーヌ・マンガン(「Les Causeuses」クリエーター)
古い椅子のフレームにヴィンテージのテキスタイルを使ったチェアは自社で手掛けたもの。ピンクの棚といい、飾られた絵画といい、ノスタルジーを感じさせる空間に。photography: Mariko Omura
ヴィンテージの家具や古いオブジェを配した白い空間に、ロマンティックなエッセンスを加えることを好むティフェーヌ。リビングルームには、差し色としてピンクを随所に取り入れるようにしているが、味気なかった棚をDIYで変身させることにした。外側はペンキで塗り替え、内側には壁紙を貼ることで、世界でひとつだけの家具が完成。おかげでクラシカルな絵画やオブジェを置いてもしっくりくる、独特の存在感を放っている。
模様が好きなだけに壁紙選びもこだわった。棚にはお気に入りの本や古いポスターと一緒に、ティーカップをディスプレイ。photography: Mariko Omura
左:木製の間仕切りを飾り棚として活用。柔軟な発想がティフェーヌらしい。 右:複数ある飾り棚に、花を生けたり、オブジェを並べたりと、単調にならないように飾る。photography: Mariko Omura
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エキゾティック×グラフィックなライブラリ空間。
ジャンヌ・ドゥロー(ビューティージャーナリスト)
本を読みながらひと息つけるようにベンチを挟んだ。ストライプ柄は家中のいたるところに取り入れているシンボリックアイテム。photography: Mariko Omura
かつてオフィスだったスペースを住居にリフォームして暮らしているジャンヌ。部屋ごとに異なる壁紙を駆使して、居住空間を明確に区切っているのが印象的だ。壁一面の書棚の中央にはベンチをこしらえ、家族皆で寛げるライブラリスペースに作り上げた。グッチの壁紙、ザンジバルのクッション、そして太陽のような照明が、モロッコ的雰囲気を醸し出している。
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シンプルな内装の一角に、デザインコーナーを作って空間のアクセントに。
キム・ハドゥ(建築家)
オフィスとしても機能する書斎の本棚には、尊敬する建築家の書籍や、それぞれの両親から受け継いだヴィンテージのオブジェをまとめて並べる。photography: Mari Shimmura
同業者の恋人とキムが暮らすのは、バスティーユにある60年代後半のアパルトマン。常に光が差し込むように間取りにこだわり、シンプルだけど開放的な内装に6カ月かけて改装した。あえて装飾を削ぎ落した余白のある空間にしているが、ワークスペースに佇む書庫に、デザイン関係の書籍やオブジェを飾るようにディスプレイ。装飾を一極集中にすることで、それがアクセントとなり空間にメリハリを生み出している。
リビングはミニマルな空間だからこそ、設計にもこだわった。スペースを広く見せるために、壁に大きな鏡を取り入れ、コーナーに沿うようにソファをオリジナルで制作した。
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柱時計を、愛らしいシルエットの本棚にリメイク!
アリス・モアロー(モデル、フードディレクター、「Table」共同創立者)
古い柱時計の機械パーツを繰り抜き、外側を白く塗って本棚にするという着眼点がアーティストならでは。photography: Panda Yoshida
小さい頃からおいしいものが好きで、センスのいい食卓とテーブルウェアのブランド「Table」を立ち上げたアリス。オルレアンのほど近くにある実家は、ロワレ川に佇むギャンゲット(川辺のレストラン)だった建物だが、アーティストである両親が手掛けた絵や陶器など、家中が自作のものであふれている。本棚も然りで、古い柱時計をリメイクしてリビングの一角へ置いているが、それ自体が大きなオブジェのよう。存在感を放ちながら実用性も兼ね備えた唯一無二の棚になっている。
ダイニングとひと続きとなったリビングスペース。ドアを開ければそのままロワレ川にボートで漕ぎ出せる、開放的なつくり。
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インダストリアル風の棚に、本とオブジェを陳列させる。
アルメル・ベルトラン(「Suzanne Marchande d'Objets」オーナー)
19世紀半ばのナポレオン3世時代のソファに座って、庭を眺めながら過ごす時間に幸せを感じて。photography: Mariko Omura
ヴィンテージ家具とオブジェのブティックを経営するアルメルは、ボボ地区として名高いバティニョルに暮らす。彼女が多くの時間を過ごすリビングルームに置かれた棚には、蚤の市巡りが昔から大好きな彼女が集めてきたオブジェの数々が飾られる。「奥行きの深い棚なので本だけでなくオブジェをあれこれ飾るのに最適なんです。過去に掘り出した花瓶や食器、お気に入りの少女の頭像、曽祖父が持っていたアコーディオン風の楽器......」。インダストリアル風の大きな棚は、16世紀から18世紀にかけて貴族社会で流行した、世界中の珍しいものを集めた陳列室"キャビネ・ドゥ・キュリオジテ"の役割を果たしている。
左:上段に、キャビネ・ドゥ・キュリオジテ風にオブジェやティーセットを飾る。 右:夜はここでキャンドルを灯して過ごす。photography: Mariko Omura
*この記事は、madame FIGARO.jpの2016年11月~2024年10月の記事を再編集し、制作したものです。
editing: ERI ARIMOTO