一本の糸から始まったプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ。創造の原点と、見据える未来とは?
Fashion 2025.12.06
ダンスなど身体表現との親和性が高い服作りをするジャパンブランドにクローズアップ。一本の糸から始まったプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ。ミニマルで繊細な美意識の宿るものづくりを追求してきたブランドの軌跡を紐解く。
PLEATS PLEASE
ISSEY MIYAKE

シンプルながら、どんな身体にも美しく調和。動けば空気をはらんでどこまでも軽やかに。重ねて纏えば、奥行きのある表情を引き出す。くるくる回る躍動感を表した「スピン」のトップ¥55,000、「オレ!」(11月15日発売)より、中に着たドレス¥68,200、スカート¥51,700、パンツ¥53,900/以上プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(イッセイ ミヤケ)
1971年にニューヨークでコレクションを発表するや、時代の寵児となった三宅一生。「一枚の布」という概念のもと進化し続ける東西のスタイルに囚われないイッセイミヤケの服は、新しい美意識の表現を探求する。


88年、従来のプロセスを逆転し、服のかたちに縫製した後にプリーツをかける衣服を発表して以降、より汎用性の高いプリーツの開発を進めていた三宅は、91年にウィリアム・フォーサイス率いるフランクフルト・バレエ団の新作『失われた委曲』の衣装を手がけることになる。そこで初めて用いたのがニット素材。軽くて伸縮性があるプリーツはダンスに適しているという三宅の予感は、フィッティング時にダンサーたちが楽しげに動き回る様子を目にして確信となる。ここからニット素材のプリーツをさらに研究開発し量産態勢を整え、93年に単独ブランドとしてプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケがスタートした。
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世界的ダンサーをも魅了する、 革新と日常を追求する服作り。

©ISSEY MIYAKE INC.
「ポワント」は、トウシューズで爪先立ちした時の上に伸びる力を表現。「爪先に宿る緊張感と、そこから全身に広がる力強いラインを意識しました」
1本の糸から開発した独自の素材を用いた、身体と動きにフィットする服は、軽くて動きやすいうえに、扱いやすいとあって、世界中の著名なダンサーからも熱烈に支持され続けている。今夏もトウシューズがモチーフの「ポワント」や、ジャンプした瞬間のプリーツが身体から離れる姿を表現した「リープ」など、ダンスに着想を得たクリエイションを発表。しかし、創作の出発点は舞台芸術に留まらないとデザインチームは語る。
「舞台や映像、写真、さらには日常の中の身体のしなやかな動きまでもがインスピレーションになります。ダンサーの肉体が放つエネルギーや呼吸のリズムを感じ取り、それを"自由な身体性"として服にどう映し出すかを探求してきました。ダンスは身体そのものが空間を描く芸術であり、服の"動き"を最も純粋に伝えるもの。そこにプリーツ プリーズならではの創造の原点があります」

©ISSEY MIYAKE INC.
空に向かって力強くジャンプした瞬間を捉えた「リープ」は、「重力から解放されたようにプリーツが身体から離れる様子」を形に。
現在も、三宅の哲学は受け継がれるが、チームの視線は常に未来を捉えている。
「プリーツ プリーズの服は、身体の延長線上にある存在であり、動きの美しさを際立たせるものだと考えています。軽快さ、そして動きに呼応してしなやかに広がるプリーツの特性を大切にしていますが、一歩踏み出した時の裾の広がりや身体を動かした瞬間に描かれる布の軌跡など、偶然のように見える"動きのデザイン"が立ち現れる瞬間におもしろさがあります。一方で、日常着としての実用性とアート性のバランスを保つことは、常に挑戦であり工夫を求められる点。素材や色彩、表現の方法に時代の感覚を取り込みながら、"日常と革新"の精神を服の中で更新し続けています」
*「フィガロジャポン」2025年12月号より抜粋
photography: Reiko Toyama styling: Yumeno Ogawa hair & makeup: Tomomi Shibusawa (beauty direction) editing: Eri Arimoto




