【フィガロジャポン35周年企画】 北欧の旅へ! 流行予想にはチワワとSATCがランクイン!? 2002年のフィガロジャポンを振り返る。

Culture 2025.08.22

パリ生まれ東京育ちのスタイル誌『フィガロジャポン』は、2025年3月で創刊35周年。パリやパリに生きる人々の哲学から旅、ファッション、食、映画、そしてアートまでフィガロジャポンが発信してきた35年の歴史を編集長の森田聖美が当時の思い出に浸りながら、思い入れたっぷりに振り返ります。2002年に発売したすべての号をプレイバック!

2002年2月5日号(02年1月20日発売)219
チワワとSATCが流行ります!

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2002年の流行予想でなんと! チワワとSEX AND THE CITYが入っている。セレブ愛用コスメにドゥラメールのクリームとブラピのワレ筋肉の蝉腹写真。いい時代だった。ベストコスメのメンバーも、常連がSK-Ⅱやヘレナルビンスタイン。筆者の愛用品でランクインしたのは、ランコムのイドラゼン ローションで、海外に行った時には必ず免税店で購入。その際に、海外とはテクスチャーの仕様が違うことにも気付き学びもあった。モデル撮影のビジュアルが、カバーのようなハピネスがあるものと、ダークロマンティックな対極のムードのタイプと2分化していったのもこの頃。

2002年2月20日号(02年2月5日発売)220
みんなで着ていたブラウス。

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この時期、ヴィンテージショップで購入したようなフォークロアムードが漂う麻っぽい素材感&ラフな太糸手仕事刺繍のブラウスをみんなで着ていた。刺繍糸の色を違えてたくさん持っていた。ロマンティックなのだが繊細ではないナチュラル感がよかった。ブラウスはまさに、売りの企画。美容は、筆者一生の記念になる特集で、「疲れをリセットして、ヘルシーボディに」。中医学にも着目し、サプリメントの摂り方、バレエレッスンやピラティススタジオ、そしてここから現在まで通うセラピストとも取材で出会った。編集の仕事をしていて、自身の健康をキープするための情報も入手できる、そんな喜びを知った。ロングインタビューは、『ピアニスト』のイザベル・ユペール。ジェラール・ウフラ氏の撮影。彼には、パリの街取材でもたくさんお世話になった。

2002年3月5日号(02年2月20日発売)221
LOVEアイテムってなんだろう?

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いまよく考えると、こういう特集タイトルは難しいのかもしれない。わかりにくすぎる。今号はアイテム押しだ。巻頭のファッション特集も、中特集でのセレクトショップ特集も。WRやマルティニークなどのセレクトショップにはよくリースしに訪れていた。当時はまだ編集者がスタイリストとともに車で借用時に同伴して、その場であーでもないこーでもない、と何を撮影するのか討議していた。撮影2~3日前にコーディネートチェックをし、現場担当がしっかりまとめてからデスクに見せて最終確認。夜の22時くらいになるまでデスクは待ってくれていた。懐かしい時代だ。

2002年3月20日号(02年3月5日発売)222
サファリロッジでパオ~ンと弾けた。

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思い出に残る海外出張のトップ3に入る、南アフリカのサファリロッジを訪れた取材。ライオンと象の追いかけっこ、キリンが悠然と歩く姿、ゴージャスなインテリアの滞在スペース、ディナーの美味しさ、赤い土の南半球ならではの景色。もちろんアフリカ以外にも、ヨーロッパのラグジュアリーデザインホテルや、タイの自然が残るヴァカンスリゾートも。編集部から数チームを構成してこんな取材に行く贅沢はいまはもうない。映画『エトワール』のドキュメントページでルグリを撮りおろしインタビューしたり。ルグリの言葉が素晴らしいーーー身体のLINEが美しいからといって、即才能に結び付くわけじゃない......。当時の編集者たちは本当に贅沢だった。

2002年4月5日号(02年3月20日発売)223
プーリアは町ではない?

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です。地方です。今号は思い切りイタリア色。ミラノとローマにフォーカスし、新ショップや注目エリアは地図つきでしっかり紹介。そして足を伸ばしたのがプーリアだった。アルベルベッロで知られる、イタリアの踵の部分の場所。おいしいが詰まっている。ファッション撮影もイタリアモーダのワンブランドがいっぱい。すごくユニークなタイアップは、フィガロ12周年にちなんで、12のカクテルを想定し、色彩のバリエーションで飲料ではない案件の紹介をしていたこと。洋服やバッグ、時計宝飾など。発想が驚くほど自由だ......。

2002年4月20日号(02年4月5日発売)224
心地いいよりも、個性的。

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2025年は「好き」を大声で叫ぶ時代なのかもしれない。好きや偏愛を強く言わなかった2000年代初頭、愛せるもの=おしゃれな人たちが注目しているもの、として「心地いい」をワードとして選んだ。しかしながら、特徴的なデザイン家具がほとんどで、ヒップな印象のインテリアグッズ紹介の特集になっている。横波修氏が撮影したロマンティックドレスのページではROMANTICという文字をバゲットで焼いてモデルたちが持っている(笑)。ファッション撮影の演出に、雑誌でもこんなにこだわって時間をかけていた。懐かしいのは故ジャン=リュック・ゴダールのスイスの家で映画評論家の和久本みさ子氏がアンヌ=マリーマリー・メルヴィルも一緒にインタビューをしたこと。どんなトラブルが起こったか忘れたが、何かが起きて土日だったので公衆電話からスイスのホテルに電話をかけた記憶が残っている。「映画は人生探求の手段でもある」とゴダールはこのインタビューで答えている。

2002年5月5日号(02年4月20日発売)225
珍しいイラストの表紙。

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ルーベン・トレドのイラストの表紙。「新おしゃれリーダーを探せ」のタイトルにはぴったりだ。オランピア・ル・タンがそのひとりとして紹介されている、当時の恋人はグラフィティアーティストのアンドレ。そしてオーロール・デエルデン・スマーグもオランピアのライバルとして登場。ジゼル・ブンチェンも世に出てきた頃。マリア・カルラも出たてだ。20ページの韓国ソウルのガイドもあって、これがまたおしゃれ。当時から、ソウルの洗練は保証されていた。中川真人氏の撮影による「スポーツシックで夏を追いかけて」は秀逸な撮影だった。夏のファンデーション、というシンプルな美容テーマも素晴らしい。わかりやすいメッセージのテーマが持つパワーは果てしない。

2002年5月20日号(02年5月5日発売)226
進化系おしゃスナをロンドンで。

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先のパリのおしゃれリーダー編もそうだったが、都市別におしゃれピープルを特集するとカラーが出やすい。ロンドンは特にそう。そして、日本人にとって真似しやすいカジュアル感がある。モデルのリバティ・ロスはまだなんだかんだいってたまに記事になる英国人。若い頃の彼女は親しみやすくていい。この頃のクロエはフィービー・ファイロがデザイナー。彼女のアトリエも取材していてオモシロイ。37軒のスタイルのあるレストラン特集では、すご~くたくさん下見に行き、食べまくり取材しまくった。リストランテ濱崎の取材はいまでも心に残っている。故・黒田恭一氏のオペラ記事の原稿も涙が出る。

2002年6月5日号(02年5月20日発売)227
しみじみと旅情がある写真。

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北京・上海特集だが、この頃の表紙の写真は故・蝦名総編集長と、石川栄子編集長が選んでいたのだと思う。そのセレクトはとても見事。旅情がある。旅への誘いは1枚の写真から始まる......そんなメッセージをもらうかの如く。確か雑貨選びにスタイリスト岡尾美代子氏が参戦し、月餅の木型を選んでいて、「この人、やっぱり変わっていておもしろい」と感じたことを覚えている。岡尾氏は現在でもパオパオしたものが好きで、先日百人町の餃子店にともに訪れたばかりだ。ロングインタビューはソフィー・マルソー。故・吉武美知子氏が執筆している。書き始めは、「ごめんなさい、と待ち合わせに遅れたソフィー」だ。そう、パリジェンヌはみんな遅刻するのだ。←偏見か??

2002年6月20日号(02年6月5日発売)228
1年の真ん中に、トレンド予想。

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大人のスタイリッシュツール企画も、モードピープルに調査した秋のおしゃれ予想も、年の半ばの時期にして、トレンド予測をしている。ものすごい物量のオンパレードな1冊だった。電子辞書なんかも推薦しちゃったりして。世界時計やiPodなど、いまはすべてがスマホに集約。紙の媒体を見返す意義はこういうところにもあると感じた。整理され、視点をもって紹介されている「当時」。「退屈な男なんてまっぴらよ」と語ったのは、デュラスを演じた故ジャンヌ・モロー。このインタビュー当時74歳くらいだったジャンヌ・モローは、花の写真を撮る趣味を始めたばかり。

2002年7月5日号(02年6月20日発売)229
北欧の魅力は果てしない。

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雑貨探しをテーマに、スウェーデンとデンマークを紹介している。確かにモノへのフォーカスだけれど、北欧取材に訪れた編集者たちはみんな魅せられて帰国する。筆者もこの何年か後に、ストックホルムと田舎町に取材に行った。ダーラヘストのような素朴な木彫りもあれば、色彩の綺麗なガラスも。デンマークはもう少し色がこっくり。隣同士でも少しだけ風合いが異なる、そんな気付きも旅取材の褒美だ。スタイリスト酒井美方子氏や地曳いくこ氏の展示会日記ページも個性が出ていてとても読み応え十分。

2002年7月20日号(02年7月5日発売)230
タヒチとニューカレ、永遠のヴァカンス。

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この時にタヒチ出張に行った先輩編集者から、黒真珠をもらった。それをずっと持っていた現在フィガロにいる編集SKが、昨年から行っているタヒチ取材でペンダントに仕立ててきたーーー時間の流れを感じる出来事だった。フランスと縁が深い南太平洋の島々。もちろんおしゃれで、島ごとに個性がある。現在の様子はmadameFIGARO.jpのタヒチ取材記事で確認してほしい。今号で時計特集をして身についた知識はいまでは宝もの。ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』がパルムドールを獲得した2002年、デイリーレポートとして発信するカンヌ記事にシフトした。ドレススナップもあった時代だ。

2002年8月5日号(02年7月20日発売)231
グッチを着たヴィンセント・ギャロが表紙に。

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今号は最高にイケてるファッション号に仕上がっている。①表紙はグッチのモードストーリーから、あのヴィンセント・ギャロがモデルとして登場。②巻頭ファッション特集は物欲に訴えかける買い物リスト。③綴じ込み付録はファッション好きが遊びに行くナイトスポット特集。④ジル・デフュール、オランピア・ル・タン、イナシオ・リベイロがカスタムメイドのアイテムを東京でフィガロジャポンのために作ってくれた。⑤メイクアップページは完全にファッション重視のトレンドカラー。

2002年8月20日号(02年8月5日発売)232
フィガロジャポン編集部では、「大人」と「スタイル」は標準語。

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いちばんよく編集部で使われていた言葉こそ、大人とスタイルだったと思う。鈍いカラーやブラック、重厚感のある素材がトレンドになると特に気分は大人スタイル。ペンシルスカートやサテン地、長くたなびかせるスカーフなどが主役の時。第2特集は大々的なルイ・ヴィトン。ファッションではリュディヴィーヌ・サニエ(初夏の横浜フランス映画祭でフィガロのイベントに登壇してもらいました!)がモデルとして出演、時計コレクションのデビュー、ルイ・ヴィトンカップへの注力、表参道店オープンなど話題が尽きなかった。

2002年9月5日号(02年8月20日発売)233
夏のパリ特集号は光がキレイで羨ましい。

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筆者が毎年のようにパリの街特集で年初に行くことになったのはいつからだろう......? この頃は、夏にパリ特集なのだ。だから、初夏の日差しの中で、花が咲いたパリの風景が撮影できる。羨ましい。オテル・コストができて間もない頃。新進女性デザイナーがたくさん出てきた頃。クラシックだけでなく、モダンな空間がヨーロッパ全体を席巻していた頃。現パリ支局長の髙田昌枝が、現地のコーディネーターとしてたっくさん取材をしていた時期だ。夏ゆえに、海際の田舎町もよく取材していて、パリから1時間半のコルシカ島にフォーカス。目が覚めるような美しい碧の海の写真にときめく。横浜フランス映画祭の記事では、セルフポートレートの手法で俳優や監督たちを捉えていて、モノクロの写真だけれどもとても楽しそうに見える。

2002年9月20日号(02年9月5日発売)234
シルバーの特色、使い過ぎだろうか。

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2025年の最近のフィガロジャポンでは、表紙のロゴの特色にシルバーを使いすぎだろうか? 過去を振り返ってみると、思いのほかシルバー使用頻度が少ないことに気付いた。大人スタイルが流行としておきながら、今号はロマンティックモード全開で、ソフトで甘やかな色彩や乙女チックなディテールの服が目立つ。東北と新潟の宿特集が綴じ込み付録で、フィガロジャポンって毎度のように海外か日本に行っているのね、といまさらながらに驚いてしまう。そしてモノクロのモード撮影写真がとても多い。タイアップで広告フィーをいただいているものまで! 常識破りな媒体だったのだ、と思った。

2002年10月5日号(02年9月20日発売)235
AtoZはエゴだ!と叫びたいが、たまに素晴らしいキャッチもあり。

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AtoZはエゴ、というのが筆者の口癖だ。展開を「考えたかのように見せるために」やっている感じがして読者にはわかりづらいのではないか、と。ただ、時折とてもおもしろいキャッチが。今号東京大阪全マップでは、Dress up dinnerがそれ。同じDでもDinnerだけにしない工夫は編集者の強みかも。でも、OがOsaka is paradice!はないだろう......。マップを見たら、パリ同様、ムカデのような線が。社屋のある目黒まで、インテリア大通りとしてマッピングされていて攻めている。シャーロット・ランプリングのロングインタビューで「鏡を見つめるのをやめなさい。(そうすれば)自分の内なる美しさに気付くはずよ」という言葉があり、これこそ真のルッキズムとの乖離だと思った。

2002年10月20日号(02年10月5日発売)236
リセットは時代のトレンドワード。

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リセットが時代の流行語となり、ずっと後になって「整える」などに変化していく。人々はいつも断捨離もそうだが、自分自身のQOLや仕事と私生活のバランスを保つことに興味がある。リセットもそのような考えから生まれてきていると思う。どちらかといえば、捨てること。無駄をしないこと。今号の身体と顔のリセット計画特集とは......。よりによって「顔」のリセットって? フィガロジャポンは決して整形などのメス入れタイプの美容特集はしない主義なので、あくまでもお手入れでがんばる。女性特有の不定愁訴に前向きに取り組んだ特集。いまでは「更年期ケア」も恥ずかしい言葉ではなくなってきたが。女の視点連載は、超絶渋い。「小林秀雄の世界」だ。「美を求める心」にフォーカスしているが「何も考えずに、沢山見たり聴いたりする事が第一だ」という言葉には真実があると思う。

2002年11月5日号(02年10月20日発売)237
キッチンが楽しければ暮らしが楽しい。

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巻頭のキッチンのインテリア実例特集のリードに上記の言葉があった。そのとおりだと思う。フィガロジャポンはずっとグルメを大切にしてきたし、食べるところが楽しくあるべきで、おいしいものを作ることや料理人の考え方などに重きを置いてきた。キッチンが使いやすくて素敵だとごはんがおいしくなる。ファッション撮影の際にも、筆者の師匠の塚本香氏は手作りのおにぎりなどを持っていくこともあった、スタッフのために。そういうフィガロジャポンのアティチュードが現われた特集でもある。

2002年11月20日号(02年11月5日発売)238
ドイツ取材は稀だけど。

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ロマンティック街道を思い切って特集することになったのは、ベルリン在住の荒井剛氏、通称つよままという凄腕の優秀なコーディネーターと出会えたからだと思う。質実剛健なイメージのある国だから、ベルリンがヒップで素敵なモダンシティと認定されるまではあまり特集していない。このロマンティック街道はストレートに町の魅力を伝えていて、そこに暮す人々を捉えた写真も魅力的。特に、61ページの大型犬(人じゃないじゃん)に惹かれる。逞しくて賢そうだ。ドイツの自然派コスメのページもおもしろかった。長い付き合いとなっているフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』にフォーカスしたカルチャー読み物も。フランス人の有名女優はみな出演したと言っても過言ではない作品。そしてエリック・ロメールも82歳でインタビューに応えてくれた。おそらく、生前にフィガロジャポンが行った最後のインタビューだったと思う。

2002年12月5日号(02年11月20日発売)239
グラムールという言葉は流行らなかったかも。

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ヘアスタイルでグラムールと言われても、おそらく気取り過ぎていて流行らなかった。雑誌とは、たまにこういうことをしてしまう。それでも造語して、天下を取ろうと躍起になる。編集者の性(さが)みたいなもんだ。レタッチ技術がそこまででもなくポジで入稿していた時代でもあったので、モデルのそばかすがそのまま誌面に出ていた。その様子がとても可愛い。無造作感がキーワード、テクニックいらずのヘアアレンジ。そういう時代だったのかもしれない。ボヘミアンスタイルがどんずばだった時期。モデルのスナップでは、まだまだマギー・ライザーが健在。アンダーカバーがパリファッションウィークに進出した頃でもあった。背後に強靭な哲学を持ったクリエイターだとパリのジャーナリストから賞賛を浴びた。

2002年12月20日号(02年12月5日発売)240
ブラックというカラーの美学。

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表紙のファッションテーマを担当したのは龍渕絵美氏だ。故・蝦名総編集長がこの写真を表紙に選んでくれたことをとても喜んでいた記憶がある。「黒い服が帰ってきた!」という巻頭特集だが、ディディエ・リュドはブラックドレスの専門店をパリで開いた人物。それを取材して紹介することには本当に意義があるといまでも思う。こういうファッション特集を見ると、可能性は無限大だと感じる。綴じ込み付録は「野菜の美味しいレストラン」。女性受け間違いなしの企画だが、それから時を経て肉食系女子も流行ったことを知っている身。時代の変遷はオモシロイ。筆者は「女らしさが目覚める5つの香り」というテーマを松尾千鶴子氏と作ったが、このページを愛していることを思い出した。この時期から、もう本格的に香りが好きだ。もっと前から好きだったが、これで確信した。

2003年1月5・20日号(02年12月20日発売)241
負を正にすることは、可能。

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いまでも、旅特集を手がける時に思い出す扉のリードはこの「冬のヴェネツィア」特集だ。

その朝、サン・マルコ広場は大きな鏡のようだった。
満月が近づいて、南風が吹くと、高潮(アクアアルタ)がやってくる。
冬はこんなの日常茶飯時だよ、と彼らは言う。
そしてまた広場は水で満たされていくーーー
ヴェネツィアはこの時期、ほんの少し静かになる。
寒々として路地は人の姿もまばらになって、
けれどその澄んだ空気に館(パラッツォ)は一層美しく輝く。
軌跡とも思える中世の街に向かう旅、
訪れるなら、断然冬だ。
*****
こんなふうに、浸水してしまった旅先を、景色を映す鏡にたとえて上手に自分が書けるだろうか......? ネガティブなことでも、そこから感じ取る体験そのものはネガティブとはならない。それこそが人生という旅でもある、と、これを読んで深く感じ入った。おそらく、いちばん好きな旅特集のリードだ。この時、ヴェネツィアに先輩編集者と出張に出かけた石川康太は現在ペンの編集長になっている。

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