ショートパンツを一切履かない男たちの理由とは?
Celebrity 2025.07.09
毎年、暖かい季節の訪れとともに堂々と復活を遂げるショートパンツだが、いまや男性の間では賛否が分かれる存在に。今回は、そんなショートパンツをあえて拒否する人々の声を聞いた。
6月の陽射しが夏の訪れを告げると同時に、街にはショートパンツ姿の男性が一気に増え始める。毎年この季節になると、男性たちはこの夏の定番アイテムをお決まりのようにクローゼットから引っ張り出す。丈はウエストから膝上、寒さに強い人なら太ももの中ほどまで。スリムなシルエット、ロールアップ、バミューダ風のゆったりしたもの、あるいはクラシックなチノスタイルまで、バリエーションは豊富だ。それでも今、このアイテムがかつてのように万人に歓迎されているとは言いがたい。中には「もう二度と履かない」と決めた男性たちもいるのだ。「もう、本当に見るに堪えない」と語るのは、ブリュッセルで販売員をしている21歳のナタンだ。取材の冒頭からその思いは明確だった。「シャツにスニーカーを合わせてショートパンツを履く男性たち、あのスタイルは本当にダサい。もっと洗練された選択肢があるのに。たとえばリネンのパンツなんて、ぐっと上品で素敵だと思いますね。」
この若き会社員の彼にとって、ショートパンツの最大の問題は「シルエットを引き立てない形」にあるという。「僕は身長169cmで、ショートパンツはどうしても体型が寸詰まりに見えてしまう。全体のラインが分断されてしまって、スタイルが悪く見えてしまう。エレガントさも、おしゃれさも感じられない」と語る。この意見にうなずくのは、パリ在住の26歳のエディトリアルライター、サミュエルだ。「歩き方やシルエット全体が重たく見える。筋肉質なふくらはぎを露出すればするほど、優雅さが失われていく気がして......。女性が履くショートパンツなら、ウエストにくびれがあったり、首筋のラインがすっとしていたりして、より洗練された印象になりますよね。でも、H型の体型をした男性が履くと......もう、目も当てられない。」
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ボーイスカウトからマッチョなスターたちへ
考えてみれば、ショートパンツはもともと街で颯爽と歩くためのアイテムではなかった。実際、1950年代頃までアメリカの一部の州では、男性が履くことを「風紀上の理由」で禁じていたほどである。18世紀にさかのぼると、夏の定番として市民権を得るずっと前、ショートパンツは子どもたちのための実用服だった。動きやすさを重視して仕立てられたそれは、膝のあたりにギャザーを寄せたゆったりとしたシルエット。貴族が摂政時代に愛用していたキュロットを思わせるデザインだ。実用性を起点に、時代とともにかたちを変えてきたショートパンツ。いま、ファッションアイテムとしてのその"立ち位置"が改めて問い直されている。

20世紀初頭、このキュロットは1908年にイギリスの軍人ロバート・ベーデン=パウエルが始めたボーイスカウト運動の制服として普及し、その後大人向けにアレンジされたバミューダパンツへと姿を変えていった。1914年、イギリス軍が熱帯気候のバミューダ諸島に駐屯していた際、ベリッジ提督は地元の「コクソンズ・ティールーム」のオーナー、ナサニエル・コクソンの従業員たちが「バミューダ」と呼ばれる動きやすいショートパンツを着用しているのに気づく。暑さ対策として、イギリス軍はこのスタイルを正式に採用することが許された。

快適で軽やかな着心地から、まず裕福な家庭のバカンススタイルとして好まれ、その後、1920〜30年代のアメリカでファッションとして人気を博した。ニッカーボッカーと同様に、膝上で絞られたゆったりとした長めのキュロットは、男性だけでなく特に登山界を中心に女性にも広く愛用されていた。そして、一般的な人気を得たのは、1948年にアメリカのファッション誌「ヴォーグ」が初めてバミューダパンツを取り上げてからのことだった。
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短パンの対しては悪評も
1950年代にかけて男性用ショートパンツの丈が徐々に短くなっていく中、本格的にマイクロ丈が定着したのは1970〜80年代頃のことだ。1960年代に始まった性革命の後、80年代には完璧な肉体を崇拝するブームが巻き起こった。スクリーン上では、アーノルド・シュワルツェネッガー、トム・セレック、ジョン・トラボルタがマイクロ丈のショーツパンツを堂々と着こなし、性別を強調したスタイルで男性たちに筋肉づくり競争への参加を促した。

しかし、こうした歴史的かつ文化的な背景にもかかわらず、ショートパンツはあまり良い評判を得ていないのが現実だ。その証拠に、インターネット上では今なおこのアイテムをめぐる議論が絶えない。男性向けブログ「Masculin(マスキュリン)」にはこう記されている。「長い間、ショートパンツは子どもやスポーツ選手の専用アイテムとされてきた。だらしなさやむしろ子どもっぽさの象徴でもあった。このイメージはいまだに根強い。」また、2021年の新聞『ラ・デペッシュ』は「男性のデニムショートパンツは、またしてもダサい復活アイテムだ」と見出しを打った。さらに10年前には、ファッションデザイナーのトム・フォードが「AnOther Magazine(アナザー マガジン)」誌のインタビューでこう断言している。
「男性は街中でショートパンツを履くべきではない。ビーチサンダルとショートパンツは街で着るものではない。ショートパンツはテニスコートかビーチでだけ着るべきだ。」
長年にわたり、ショートパンツは厳しい批判を避けられなかった。その理由は、あまりにも実用的すぎること、性別を強調しすぎること、そしてコーディネートが難しいことにある。中にはダサいと感じる人もいるだろう。27歳のロマンはこう指摘する。「ショートパンツと言われると、僕にはベージュやネイビー、コーラル色のチノで、少しタイトなシルエットのものが思い浮ぶ。30〜45歳くらいの男性が、デッキシューズやエスパドリーユと合わせて履いているイメージ。裾の小さな折り返しもアクセントとして入っている。でも、僕には無理だね。僕にとってショートパンツは、純粋に機能的な実用品に過ぎないよ。」
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男のショートパンツは、ある種の男性らしさの象徴?
しかし、このショートパンツにまつわる悪いイメージは、男性たちが自分の体とどう向き合っているかという問題とも深く関わっているのではないだろうか。というのも、ショートパンツはその名の通り脚を露出するアイテムであり、その点が着用者の印象を左右するからだ。この点について、男性のアイデンティティに詳しい社会学者ヴァージニー・ル・コールは次のように解説する。「ショートパンツは『自分の体を見せる』という意味合いがあります。ショートパンツを履く男性は自然と自分の脚と向き合い、比較することになるでしょう。『十分に筋肉がついているだろうか?』『細すぎないだろうか?』『毛深さはどうだろうか?』といった具合に。そして同様のことがタンクトップにも言えます。一般的に、男性はかなり筋肉質でない限り、あまりタンクトップを着ません。」
ここ数シーズン、ハリウッドはショートパンツのイメージ刷新に本腰を入れている。古いステレオタイプを取り払おうと試み、今や流行は非常に(非常に!)短い丈のショートパンツだ。俳優のポール・メスカル、ジェイコブ・エロルディ、ペドロ・パスカル、ジェレミー・アレン・ホワイトは、マイクロショートパンツ姿で何度も目撃され、SNSを通じてZ世代の間で本格的なトレンドを巻き起こしている。今年のローラン・ギャロスの観客席でも、セレブ御用達のヘアスタイリスト、ポール・デュシュマンやモデルのコランタン・ウアール、俳優のジョナサン・ベイリー、ラッパーのタイラー・ザ・クリエイターらが自信満々にマイクロショートパンツを着こなし、その存在感を示した。
それでも、このマイクロ丈のショートパンツのムーブメントがセレブやネットの世界以外で広がるのはなかなか難しいようだ。男性のアイデンティティを専門とする社会学者ヴァージニー・ル・コールは、その理由をこう説明する。「重要なのは、『公共の場でショートパンツを堂々と履いても批判されないのは、一体どんな人たちなのか?』という問いです。そうした限られた人たちはたいてい、セレブリティです。ポール・メスカルならショートパンツが似合うのは間違いないけれど、普通の男性が同じことを街でやって同じようにポジティブな反応を得られるかは疑わしいですね。もっと広い視点で見れば、男性は女性に比べて服装の自由度が格段に少ないのです。選べる服の種類も、着ていい服の範囲も、明らかに制限されています。」
そうなると、気温が35度を超えるような暑さの中で唯一の解決策となり、今後も変わらず定番であり続けるのは、やはりクラシックなショートパンツだろう。このタイプは、丈が短すぎず長すぎず、派手すぎず、タイトすぎないもの。ファッション好きには物足りなく感じられるかもしれないが、冒険せずに無難なファッションを好む男性たちに支持されている。
さらにショートパンツは、これまでもある種の男性らしさの象徴として存在してきた。男性性の専門家ヴァージニー・ル・コールはこうまとめる。「ショートパンツやバミューダパンツは、社会的に理想化された"男らしさ"の象徴のひとつとも言えます。」しかし、多くの男性はもはや、そのステレオタイプを背負うことを拒んでいるのだ。
From madameFIGARO.fr
text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi