望月春希と斎藤工。Netflix映画『This is I』が照らす、ふたつの魂が交差した瞬間。

Culture 2026.02.05

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人生の異なる地点に生きるふたりが出会い、その交点から物語が立ち上がる──。Netflix新作映画『This is I』は、実在の医師・和田と、アイドルを夢見るアイの人生を重ね合わせながら、「生きること」「輝くこと」の本質に触れていく作品である。

幼い頃から、世間の偏見に苦しみながらも「アイドルになりたい」という夢を追い続けたケンジが和田医師との出会いにより、心身ともに自分らしい人生を切り開いていく。一方、過去に患者を救えなかったことに苦しみ続けていた和田医師もケンジとの出会いによって、性別の違和感に苦しむ人々が多くいる現実を知り、性別適合手術を執刀する。

タレントとして活躍する、はるな愛の原点を描く本作で、主人公のアイを演じた望月春希と和田医師を演じた斎藤工。世代も立場も異なるふたりが、この物語とどう向き合ったのか話を伺った。


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斎藤が本作に関わり始めたのは、まだタイトルも定まっていない初期段階だったという。世界配信を前提とした企画概要からは、時代を鋭く捉える切り口を感じた一方、脚本を読み進めるうちに、二つの人生が静かに重なり合う、ラブストーリーのような美しい物語だと受け取ったと語る。

「和田先生の晩年や最期の描写については、非常に慎重に向き合いました。原作の終盤は、弁護士をつけずに法律と向き合った記録や、警察に提出した手書きの文章、カルテなど、まさに"生きた痕跡"そのものだった。だからこそ、どう命と距離を取るのか、監督やご遺族とも丁寧に話し合いました」(斎藤工)

和田が美容医療の道を選んだ背景にも、斎藤は強い関心を寄せた。劇中の時代背景では外科から美容外科へ進むことに、医療界では"都落ち"のような視線がある。しかし彼にとって大切だったのは、治療後の「日常」を生きる人々のステージだった。その姿勢こそ、和田という人物の核心だと斎藤は捉えている。

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一方、オーディションを経てアイ役を射止めた望月は、脚本を初めて読んだときの感覚をこう振り返る。

「ずっと自分の中にあったはずなのに、眠っていた"もっと輝ける"という気持ちを思い出した感覚でした。表現って、ダンスや芝居、歌という枠を超えて、もっと平らでもっと広いものだと思ったんです」(望月春希)

ただし、最初からアイに共感できたわけではない。望月は自分自身の過去をたどり、しまい込んでいた感情や記憶と向き合う作業から役作りを始めた。幼い頃の写真を見返し、音楽を聴き、アイが生きた時間と空間に自らの身体を置いていく。脚本のト書きにあった「東京タワーで街を見つめるアイ」という一文をきっかけに、実際に何度も東京タワーへ足を運んだというエピソードは象徴的だ。

「西の方角を見ると、光が少なくて奥が暗い。でも遠くに小さな光が見える。その時、"私が輝きたい場所はあそこかもしれない"って思ったんです」(望月春希)

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異なる世界に生きてきた和田とアイだが、望月はふたりを「価値観が違う存在」ではなく、「温度が似ている存在」だと感じていたという。表現の仕方は違えど、内に持つ優しさや強さは同じ。斎藤もまた、「前置きがいらない関係性」だったと語り、初対面から通じ合う感覚があったのではないかと語る。

和田は外科的な手術によってアイを救うが、同時に、アイの存在が和田自身を支えていた。ショーパブで輝くダンサーたちの姿が、彼の生きる糧だったこと。斎藤は、和田の人生を「輝く人を支えることで成り立った輝き方」と肯定的に捉える。

作品が完成した後、はるな愛とその母、そして和田の家族も揃って作品を観た試写の場は、出演者にとって特別な時間になったのだという。言葉を超えた握手やハグが交わされ、その光景こそが、この作品の存在理由だと斎藤は語る。

現場で斎藤が感じた望月の存在感は、「言葉が台本のセリフではなく、実体を持って届く」稀有なものだったという。一方、望月にとって斎藤は「オーラをゼロにもできる」存在。冗談酒場での初対面のシーンでは、「生きること」「そこにいること」を、視線だけで感じ取ったと振り返る。

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世代を超えた今回の共演について、斎藤はこう締めくくる。「中年の務めは、若い表現者のエネルギーを邪魔しないこと」。導くのではなく、風除けになること。その姿勢が、作品全体にも通底している。『This is I』は、トランスジェンダーに関するテーマを描いた物語でもあるが、"自分らしく生きる""夢を追いかける"ことがポップなエンターテインメントとして観客に届き、気づけば自分自身の物語へと接続されていく。その静かな力強さこそ、本作が世界に放たれる意義なのだろう。

Netflix映画『This is I』
2026年2月10日(火)より世界独占配信
出演:望月春希、木村多江、千原せいじ、中村 中、吉村界人、MEGUMI、中村獅童/斎藤工
監督:松本優作 企画:鈴木おさむ 特別協力:はるな愛
https://www.netflix.com/thisisi

photography: Shoichiro Kato text: Atsuko Tatsuta

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