シャネルのビューティを率いる3人が語る、クリエイションの信条、日本文化の魅力。

Beauty 2025.06.03

シャネル ビューティの未来を形造るコミュニティ「コメット コレクティヴ」。複数のクリエイターが協働し、互いにインスピレーションを与え、あらゆる視点からシャネルのコードを再解釈していくその試みにおいて、最初のアーティストに就任したアミィ・ドラマ、セシル・パラヴィナ、ヴァレンティナ・リー。イベント「カラー オブ アリュール」の開催に合わせて来日した彼女たちに、クリエイションにおいて大切にしていることを聞いた。

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左から、アミィ・ドラマ、セシル・パラヴィナ、ヴァレンティナ・リー。それぞれが異なるバックグラウンドを持ちながら、互いの特長を生かし、高め合う存在。©CHANEL

― コメット コレクティヴとしての活動も2年半が過ぎましたが、刺激や影響をどのように与え合っていますか?

セシル・パラヴィナ それぞれの文化背景やスキントーン、そして嗜好性が異なっていることが、ポジティブに表れています。自分ひとりであればデザインしなかったであろう製品を生み出すことができ、新たなお客様とも出会えたり。テクニック的にもお互い得意なことが違うので、製品のテクスチャーの生かし方などもフィードバックし合うことができて参考になるんです。

アミィ・ドラマ メイクアップの現場でふたりがどういうふうに色を使い、プロダクトの質感を生かし、モデルの顔を仕上げていくかを見るだけでも非常に刺激的ですね。同じ仕事を何年も続けていると自分のやり方に行き詰まってしまうこともありますが、そんな時にふたりは新しい視点を授けてくれます。

ヴァレンティナ・リー シャネルという歴史あるメゾンのクリエイターを務めることにプレッシャーを感じる時もありますが、3人でアイデアを共有し、ディスカッションしながら一緒に仕事できる体制は心地いいものです。少し詩的な喩えになりますが、夜空に星がひとつあったとしてもその輝きは小さいけれど、その星が3つになればより美しく輝くことができる、と感じています。

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セシル・パラヴィナ ©CHANEL

― 素敵な関係性ですね。クリエイションにおいて、普段から意識していることはなんですか?

アミィ 私はバランスが大切だと考えています。ワクワクするようなものを作りたいという意欲と、同時にタイムレスなものを追求する気持ち。それから、シャネルの精神に寄り添ったものであること。その中で一体どういうものが作れるのか、自分に問いかけます。私のインスピレーション源になっているのは、地元のマーケットにいる人々を観察すること。年配の女性が何を着ているのか、おしゃれな若者が何に夢中になっているのか......それを眺める時間が創造に役立っているんです。

ヴァレンティナ ものづくりの際には必ずストーリーを考えています。色のひとつひとつにもストーリーを創りたいのです。世の中にはたくさんの色がありますが、ストーリーを持つと、その色は唯一無二のものになります。シャネルのアイコニックな色たちにも物語がありますよね。そして目で見るだけでなく、心を使って物事を感じること。映画にも、旅にも、マンガにもミュージックビデオにも、自分の好きなものと向き合う時は、身体の中、心で感じ取るように対峙しています。

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ヴァレンティナ・リー ©CHANEL

セシル 私はアーカイブを深く掘り下げるのが好きで。たとえばガブリエル・シャネルが過去に訪れた旅へのリサーチを重ねて、その土地にある色を想像し、ときには実際にその地を訪れてインスピレーションを得たりもします。仕事以外で博物館に行ったり、映画を観る時間もとるようにしています。特に勅使河原宏監督の作品が好きで、60〜70年代のアヴァンギャルドな映画にインスピレーションを受けているんです。

― いま勅使河原監督の名前が挙がりましたが、前回のインタビューでも日本への愛を語ってくれていたみなさん。その時からさらに新たな発見はありましたか?

セシル もともと生け花に興味があったのですが、前回の来日時、京都で師範の方にお話を聞く機会に恵まれました。この体験が、私の人生を一変させたほどに印象深いものでした。それまでは花器にあしらわれている姿を単純に「美しい」と思っていましたが、解説を聞いて、花が枯れゆく変化までをも味わうものであることを知ったり、その様に死生観を重ねたり、人間そのものが自然の一部であることに思いを馳せたり。非常に深い世界が広がっていることを理解したのです。これは本当に素晴らしい経験になりました。

アミィ 私の忘れがたい体験は、歌舞伎役者の隈取を目の前で見せてもらえたこと。彼らは主に指と手を使って化粧するのですが、ダイナミックでありながらとても正確。そして歌舞伎の化粧には、表情を増幅するような役割があるんですよね。メイクの仕事をしていると細部にわたる完璧さを求める傾向があるのですが、歌舞伎役者からいい意味での荒っぽさを学んで、私もいつか、こんなメイク手法を取り入れた作品に挑戦してみたいと感じました。

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アミィ・ドラマ ©CHANEL

ヴァレンティナ 私は子どもの頃から日本のマンガやアニメに影響を受け、今回が14回目の訪問になりました。いま、日本語も勉強中。日本に来たらとにかく街を歩きながら、若い子たちがどんな服を着ているか、どんなヘアカラーにアレンジしているかをチェックするのが楽しくて。日本のみなさんは、色で遊ぶのが上手ですよね。カラーマスカラやカラコンの使い方が自由で。刺激を受けて、コスメショップを巡るとつい買い物をしすぎてしまいます。

アミィ 私は前回が初めての日本だったんですが、ヴァレンティナおすすめのコスメショップに連れて行ってもらってスーツケースがいっぱいになるほど買い物をしたので、翌月のカードの請求額がとんでもないことに(笑)。日本のカルチャーは西洋とは違う流行があって、独特でおもしろいですよね。たとえば80年代のアンダーグラウンド演劇だったり、セシルの好きなヴィジュアル系バンドだったり。非常にユニークな価値を生み出していると思います。

― 3人の視点から語られる日本の魅力を聞くと、私たちにとっても文化の再発見に繋がりそうです。最後に、日本でシャネルのメイクアップを愛用している方々にメッセージを。

アミィ トレンドを追いかけるのではなく、個性を生かすスタイルを大切にしてください。シャネルのプロダクトが、それを叶えるお手伝いをできると思います。

セシル SNSから離れて街に出るのもいいですね。そこで目に映るものを楽しんでください。

ヴァレンティナ 私にとってはみなさんがインスピレーション源。だから大胆に色を纏って、その輝きをどんどん出していってください!

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