マイ・フェイバリット・ニューヨーク・ムービー #04 新元良一(作家) ニューヨークらしい洗練されたユーモアを映画で味わう。
Culture 2016.08.26
いつの時代も映画人をインスパイアし、
数々の映画の舞台となった街、ニューヨーク。
各ジャンルで活躍する、映画とニューヨークを愛する人たちが、
ニューヨークを舞台にした映画の中から、自身のベスト3を推薦します。
20代で渡米後、22年間ニューヨークに住み、アメリカ人作家のインタビューや
文芸翻訳、小説創作などを手がけてきた新元良一さん。
“英語の先生”だったというウディ・アレンの『マンハッタン』をはじめ、
マンハッタンのそれぞれのエリアに流れる空気に親しみ、その魅力を知る
新元さんが選ぶ、ニューヨーカーらしいエスプリの効いた3作品。
『マンハッタン』
いままでどのくらいの数の、ニューヨークが舞台の映画を見てきただろう。街角を曲がるとたちまち様子が変わってしまう、風景に備わる唯一無二の魅力がいつも銀幕を彩る。では、このウディ・アレン作品が放つ魅力は何かというと、やはり洗練さだろう。初めて見終え、描かれる風景がセントラル・パーク東のアッパー・イーストサイドと地図でたしかめた。「洗練さ」の欠片もなかった20歳のころ、ワイン・グラスの持ち方、肩を並べて素敵な女性との歩き方、洒脱な会話に憧れを抱き、かの地へ移り住まなくてはと心ひそかに決めてはや三十数年になる。
『フィガロジャポン』2016年9月号は待望のニューヨーク特集! 「ベスト・イン・ニューヨーク。」と題して、日本未上陸の最旬ファッションからグルメ、ブルックリンのクラフトシーンまで、この刺激的な街を最大限に楽しむためのトピックが満載! もちろん詳細で便利なマップ 付き。読めばすぐにでもニューヨークへ旅したくなる決定版!
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『恋人たちの予感』
同じセントラル・パークでもこちらは西側、アッパー・ウエストサイド。マンハッタン内の他の地域でも撮影した本作だが、そう思うのは、主人公の男女がその周辺の色とりどりの落ち葉を踏み、互いの感情を確かめ合う場面が印象的だからか。恋しているとは認めたくない、でもなぜか気になって仕方ないカップルの思いが明らかになるプロセスを、諧謔というスパイスで味つけする。洗練さはここでも見つかるが、主役を務める役者ふたりが交わす会話の妙こそが作品のウリ。わたしも同じ経験をした、と観客に思わせる大衆性は特筆すべきものだ。
『フィガロジャポン』2016年9月号は待望のニューヨーク特集! 「ベスト・イン・ニューヨーク。」と題して、日本未上陸の最旬ファッションからグルメ、ブルックリンのクラフトシーンまで、この刺激的な街を最大限に楽しむためのトピックが満載! もちろん詳細で便利なマップ 付き。読めばすぐにでもニューヨークへ旅したくなる決定版!
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『アフター・アワーズ』
他の2作が示すように、ニューヨークの映画にはユーモアがよく似合う。だがこの作品は、先の2作よりもかなりダークな雰囲気が流れる。物語で設定された時間帯が夜、ひとけのないダウンタウンのソーホー地区というのが理由かもしれない。大した罪を犯したわけでもない白人男性が、偶然出会った女性の誘惑に負け、次から次へと困難を背負う不条理なドラマだが、それでも緊張やスリルの狭間にクスッと笑わせてくれるおかしさがある。アレン同様、生粋のニューヨーカーであるスコセッシが監督なだけに、笑いの感覚にも知的な部分を感じさせる。
『フィガロジャポン』2016年9月号は待望のニューヨーク特集! 「ベスト・イン・ニューヨーク。」と題して、日本未上陸の最旬ファッションからグルメ、ブルックリンのクラフトシーンまで、この刺激的な街を最大限に楽しむためのトピックが満載! もちろん詳細で便利なマップ 付き。読めばすぐにでもニューヨークへ旅したくなる決定版!
texte: RYOICHI NIIMOTO